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富山家庭裁判所 昭和51年(少ハ)1号 決定 1976年5月06日

少年 I・S(昭三二・一・二三生)

主文

昭和五〇年少第一〇九一〇号道路交通法違反保護事件につき、当裁判所が昭和五一年一月二二日になした「少年を富山保護観察所の保護観察に付する」との決定を取消す。

昭和五一年少第一〇〇四二号道路交通法違反保護事件につき、当裁判所が昭和五一年一月二九日になした反則金五、〇〇〇円の納付指示及び「この事件について少年を保護処分に付さない」との決定を各取消す。

理由

少年は昭和五一年一月二二日当裁判所において道路交通法違反保護事(当庁昭和五〇年少第一〇九一〇号)によつて保護観察処分に付され、現在保護観察中であり、更に昭和五一年一月二九日当裁判所において道路交通法違反保護事件(当庁昭和五一年少第一〇〇四二号)によつて反則金五、〇〇〇円の納付指示を受け即日納付し、同日不処分となつた。

ところで、当審判延における少年の供述、少年作成の上申書、当裁判所調査官草野洋子作成の調査報告書三通によると、いずれの非行もAが捜査官に対し少年の名を騙つたものであつて、少年はAに恐怖心を抱いいていたため調査審判の際、真実を述べることができず前記各処分を受けたものであることが認められる(なおAは前記のように少年の名を騙つて供述書に署名したため私文書偽造、道路交通法違反に問われ、更に他の事件とあわせ、中等少年院送致となつている)。

そうすると、前記保護観察処分は、少年法二七条の二第一項を適用し、また前記納付指示及び不処分決定は、同規定を類推適用して(反則者が反則金相当額を仮納付した後警察本部長が誤りを発見した場合は道路交通法一二九条四項によりその金額を返還し、また、反則金納付後に警察本部長が誤りを発見したときは、反則金還付をなしている実情にあるところ、少年における不納付の際の反則金納付指示は、少年に対し納付義務を生じさせ、その納付後は審判条件の後発的欠缺により不処分決定又は不開始決定をなす取扱いであるが『道路交通法一三〇条の二第三項、一二八条二項』、かかる納付指示は少年に対する強力な保護的措置であり、不処分決定とワンセットにして保護処分に準ずるものと観念でき、しかも、誤つてかかる処分を受けた少年に対しては、それが金銭の納付を命ずるものであることから、その受けたと同質の被害回復をさせることが可能であるから『反則金の返還につき富山県警察本部と協議済みである』、保護処分の継続中と同視でき、かつ前記警察本部の過誤是正措置と対比すればその取消の実益も存するものである)、いずれもこれを取消すべきものである。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 肥留間健一)

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